校長室より(23)Aちゃんの話〜育てたのか、育ったのか(後編)

 そこで、Aちゃんの手が届かない所に置くと、彼はすっくと立ち上がり、ボールや新聞の切れ端を両手いっぱいに取り出した。こぼしたりばらまいたりしないように床に置くことを繰り返すうちに、動きも俊敏になった(また不発)。

 以上、前号再掲

 いよいよ棚の上に置くと、Aちゃんは怒り、ついに私に助けを求めた。ここで、母親に手伝ってもらいながら、欲しい物を指さして声を出す(お願い、取って)を身に付けた(三項関係まであと一歩)。
 ここで、夏休み。母親と姉(弟思いの優しいお姉ちゃん)は、Aちゃんが求めていることが分かるようになったと喜んでくれたが、歩行の課題は残った。

 夏休みが終わり、玄関で待っていると、Aちゃんが車から降ろされました。ここまでは、いつもどおり。しかし、その後が違いました。Aちゃんが満面の笑顔ですたすたと歩き出しました。その後ろを母親と姉が笑顔でついてきます。
 指導後、スタッフ一同、Aちゃんが歩けるようになったことで盛り上がっていると、スーパーバイザーから一言。
「それは、あなたがAちゃんを育てたのですか、Aちゃんが育ったのですか」
そうです。歩けるようになった要因を明らかにすることがプロの役割、仕事なのです。
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