校長室より12 私の先生なんか、片手でピアノが弾けるんだからね2

「特別支援学校は職員数が多く、一人一人に対して手厚い指導、支援を行ってもらえる」と、たびたび耳にします。
 これは、二つの意味で誤りだと言いたいのです。

 第一に、「人海戦術」は褒め言葉ではない。児童生徒の自立に向け、指導するのですから、最終形は、チームで支援しつつ(これは外部からは見えない、分からない)、年度当初よりも少ない人員で指導する体制、学級やグループによっては一人で指導する体制になるはずです(これは外部から見え、分かる)。ですから、参観者に「指導途中の様子です。年度末にはまた違った様子を見ていただけます」と話しています。

 第二に、「特別支援学級の方が、人手が多い(ことが多い、ことが少なくない)」。こちらについても、子どもは子どもから学び取るように育てるという視点から適切かどうか、検討が必要ではないかと話すようにしています。

 ちなみに、私の初任校は、肢体不自由の特別支援学校。件の子どもは三肢麻痺(両足と片手の麻痺)、その子にとって着替えや作業などが片手でできるようになることは大きな目標でした。
 ですから、片手でピアノが弾けることは自慢できることと思っていたのでしょう。

校長室より 11 私の先生なんか、片手でピアノが弾けるんだからね 1

これは新採用の5月、担任する子どもが隣のクラスの子に放った言葉です。
 私は小学部2年生の担任。ある朝、1年生担任と教室に向かう途中、子どもたちが口喧嘩をしていました。1年生が「私の先生は絵が上手だ」と担任自慢をしたのに対し、私の学級の子どもが言い返したのがタイトルの言葉でした。
「小網先生、愛されてますね」の言葉に冷や汗一斗。ほろ苦い思い出の一つです。
 さて、本校を参観された方々から数々のお褒めの言葉をいただきます。
「指導が丁寧ですね」
「掲示が工夫されていますね」
「先生方が明るいから、子どもたちも明るいんですね」
 チームふれあい、職員の努力の賜です。
 ですが、時に引っかかることもあります。それは、「手厚い指導をされていますね」と言われることです。
 「特別支援学校は職員数が多く、一人一人に対して手厚い指導、支援を行ってもらえる」と、たびたび耳にします。
 これは、二つの意味で誤りだと言いたいのです。

校長室より 10「手取り足取りでの100点」と「自ら学び取った10点」どちらが尊いか

日本の職業の49%が、10〜20年後に機械・ロボットによって代替が可能となると予測されています。以下が代替可能と予測される職業です。(野村総合研究所)
小売店販売員 会計士 セールスマン 乗用車・バンの運転手
荷物の箱詰め・積み下ろし作業員 レジ・切符販売 一般秘書 カウンター接客係
大型トラック・ローリー車の運転手 コールセンター・施設の案内係
 子どもたちは、身に付けた知識がすぐに使えなくなる時代を生きることになります。学校は、生涯学び続ける子ども、自ら学ぶ子どもに育てることが求められています。 「主体的、対話的で深い学び」は特別支援教育でこそ実現しなければならないのです。
子どもの「独り立ち」とは、自分で決めて(自律)、必要な支援を求めながら、自分の力で(自立)やりとげる姿と言えます。 
そのためには、一人で知りたいとき、したいとき,
支援の求め方を含め、その方法を知っていることが必要です。
そして、何より学び取る姿勢が大切です。
これまで教育相談で「保育園・幼稚園や、小学校に入園・入学したら、子どもの言葉が悪くなった」という相談を多く受けてきました。
 私は、このようにお話してきました。いかがでしょうか。
「よかったですね。教えてもらっても中々身に付かないのに、お子さんは教わってもいないことを自分で学んだんですね。将来が楽しみですね。大丈夫です。1か月もすれば落ち着きます」。
「手取り足取りでの100点」よりも「自ら学び取った10点」が尊い。このことを先ず共有したいのです。

校長室より9 自己有用感を育くむ2

私は、自己有用感について考えるとき、重松清著「ひこばえ」(朝日出版社)の一節を思い起こします。
 「あのひと、誰かになにかをお願いされたことって、もう、ずうっと、何年もなかったんじゃない?」
私もそう思う。誰からも頼りにされず、願いごとを託されず、だから、当然、誰からも  「ありがとう」と言われるこのない日々を、後藤さんは長年送ってきたのだ。
 「やり甲斐とか生き甲斐っていうのは、誰かに「ありがとう」と言われることなのかもしれないよな」
ご家庭でも、学校でも、「ありがとう」を伝えるチャンスはたくさんあります。手伝いや役割は「させる」ものではなく、家族や仲間のために力を子どもが力を発揮するチャンスと考えて、頼んだり用意したりしてはどうでしょうか。

校長室より8  自己有用感を育くむ1

十日町市では、すべての学校で子どもの自己有用感を育くむ取組を進めています。この自己有用感は、「他人の役に立った」「喜んでもらえた」といった他者とのかかわりの中で育つものだと言われています。

中学部の缶バッジ(十日町の魅力シリーズ1)製作に対し、NPO TASC様(十日町市大字稲葉)から奨励金をいただきました。詳しくお話を伺うと、十日町市の観光名所バッジ製作を通して郷土の魅力を発信し、十日町の発展に貢献しようとする取組を高く評価していただいたとのことでした。
本校の取組が「他人の役に立った」「喜んでもらえた」ことを生徒と共に喜びたいと思います。

校長室より(7)どきどきわくわく ときめく2学期に

 時間の流れは一定なのに、私たちは、長く感じることもあれば短く感じることもあります。

 NHKの人気番組「チコちゃんに叱られる」で「大人になるとあっという間に1年が過ぎるのはなぜ」という質問があった。回答者は正解を言えず、チコちゃんに例の言葉で叱られていたが、答えは「人生にときめきがなくなったから」だそうだ。子どもは目の前で起きることに発見や疑問、驚きなど様々な感情を抱き、ときめいているから時間を長く感じるのに対して、大人は毎日が同じことの繰り返しに思えてときめかず、時間を短く感じるという。
 今井環氏(日本相撲協会理事)「ときめく時間を持ち続けたい」日本教育2019.8

 なるほど、旅行では、あれこれ思いをめぐらせる行きの時間は長く、日常に帰るだけの帰りの時間は短く感じます。往路では寝ないのに復路では寝てしまうのは、疲れもありますが、ときめきがないからなのですね。
 さて、授業や行事にあれこれ思いをめぐらせながら臨むことで、ときめきが生まれ、一コマ一コマにわくわくどきどきすることでしょう。そのために、子ども一人一人が見通しをもつことができるようしかけ・準備が必要です(段取り八分です)。

 「見通し」とは、辞書の定義では「初めから終わりまで全部見ること」。「見通しが立つ」「先行きの見通し」などの用例からおおよそ見当がつきます。
 子どもの視点に立つと、具体的にはどういう状態でしょうか。

(1)日程、手順、内容が分かって臨む
(2)目標を達成しようと臨む、自分の役割を果たそうと臨む

(1)の段階にとどまらず、(2)の段階までいたっていれば、ときめきが生まれ、一コマ一コマにわくわくどきどきすることでしょう。

校長室より(6)プロの力2

令和元年度から村中智彦教授(上越教育大学)から指導力向上に向けてご指導をいただいています。村中教授が一人の中学部生の身体のぎこちなさを指摘されたことがありました。観察の時間はわずかしかなかったはずです。プロの力を見せつけられた気がしたのは、私だけではなかったことでしょう。子どもの言動を観察し、適切な次の一手を繰り出すことのできる力量を身に付けたいと、改めて感じました。
高校生、大学生の頃、塗装、レストラン、自動販売機の設置、大工等いろいろなアルバイトを経験しました。どこでも、仕事が速く、正確で、きれい(美しい)方々に共通していたのは、しっかり事前準備をするということでした。動き出してから、足りない物を取りに行くといったことがないのです。
これまで初任者研修を担当すると、「プロの仕事は段取り八分」と伝えてきました。村中教授風に言えば、分かる動けるための環境づくり、支援ツール作成を徹底することがプロ教師の仕事ということになるでしょうか。

校長室より(5)プロの力 1

校長室より(5)プロの力 1
 大相撲の解説を聞くたびに、プロの力を感じます。一瞬のうちに勝負がついても、左右の手や足がそれぞれどう動いたのか、優勢になったポイント等をコンパクトに伝えるからです。
 プロ野球では、解説者間の力量差が大きいように思います。解説通り配球されたり、体にぶつかるかと思うような球を打ち返すことができた理由を鮮やかに解き明かしたりする解説者もいれば、「気合いで打った、気持ちを込めて投げた」ばかりの方もいます。故衣笠さんの解説は、技術面にも選手心理にも触れていて、私は好きでした

校長室より(4)楽しい授業〜分かって動ける授業づくりに向けて

校長室より(4)楽しい授業〜分かって動ける授業づくりに向けて
 楽しければ、人は自ら取り組みます。止められても、続けます。子どもも同じです。
楽しいことの大切さが伝わる動画2本です。1本90秒程度です。ぜひご覧ください。
  
  

校長室より(3)楽しい授業〜分かって動ける授業づくりに向けて

校長室より(3)楽しい授業〜分かって動ける授業づくりに向けて
( 1 )楽しくて、分かる授業
( 4 )楽しくなくて、分かる授業
( 2 )楽しくて、分からない授業
( 3 )楽しくなくて、分からない授業
 最もよい授業は「楽しくて、分かる授業」、最も悪い授業は「楽しくなくて、分かる授業」。
 「楽しくなくて、分かる授業」を言い換えると、「楽しくもないのに分からされる授業」と言うことができます。
 本来、子どもは学ぶことが好きです。できなかったことができるようになること、知らなかったことが分かるようになることがうれしいからです。また、子どもはテストが大好きです。自分ができるようになったこと、分かるようになったが確認できるからです。もしも、テストが嫌いな子どもがいたら指導を改善する必要があります。
 子どもにとってできるようになってうれしい、分かるようになってよかったと思える課題を私たちは用意しなければいけません。そうした課題にチャレンジすることは自分自身の良さを見付けることにつながります。
 チャレンジして分かる・できるようになったことを喜ぶ経験を重ね、新しいことにも自信と勇気をもってチャレンジすることを楽しむ子どもを育みたいものです。

校長室より(2)楽しい授業〜分かって動ける授業づくりに向けて

「楽しい・楽しくない」×「分かる・分からない」で4つの授業を想定した場合、「楽しくて、分かる授業」が最もよい授業ということには異論はないでしょう。
では、2番、3番、4番(最も悪い)はどの授業でしょうか。
( 1 )楽しくて、分かる授業
(  )楽しくなくて、分かる授業
(  )楽しくて、分からない授業
(  )楽しくなくて、分からない授業

夢の学校 3つの合い言葉

「ハロー」
あいさつは人と人をつなぐ魔法の言葉です。自分の得意なあいさつで、友達、地域の方々との絆を深めます。
「レッツ・エンジョイ」
一人でやったら楽しかった。みんなとやったらもっと楽しかった。友達や先生と力を合わせ、楽しみを大きくふくらませます。
「レッツ・チャレンジ」
チャレンジすると、自分のよさを見つけることができます。自分のよさに気づくと、勇気がわいて次のチャレンジに向かうことができます。

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