校長室より14 意識的に学習方法を指導しよう

授業では、子どもに「学習内容」と「学習方法」を教えています。
 私たちは、ついつい何を教えるか(学習内容)に目が向きがちですが、意識して「学習方法」を指導しようというのが今回の提案です。
 私は学級通信にこのように書いてきました(小学校でも、特別支援学校でも)。
 自分一人で知りたいとき、やりたいときに使える知識や方法を教えておくのが教育である(教師を必要としなくなるように育てるのが教師の仕事だと考えています)。
 自立するためには、しっかりと「学習方法」を身に付けることが大切です。しっかり学べば、「学習内容」は自ずと身に付きます。この先「学習内容」が陳腐化して使えなくなっても、「学習方法」さえ身に付いていれば更新することができます。「学習方法」を身に付けるには時間がかかりますが、身に付けば加速度的に学びが進みます。
 同級会で教え子たちの言葉を拾っていくと、興味深かった「学習内容」の話題があるのはもちろんですが、「学習方法」の話題もあります(説明文や設問の読み方、辞書や索引の活用が役に立っている。自分の子どもに同じ方法で自学をさせている等)。

校長室より13 指導のポイントは合っているか

 ずいぶん前に読んだ実践記録のメモが手元にあります(出典は不明です)。
【メモ】
「教師の存在そのものが教育だ」というが、むしろ私の存在が障害になっているのではないか。

 教育に真摯に向き合っているからこその厳しい言葉です。メモには続きがあります。
【メモ】
「学校から得意そうに自転車で校外に出てしまう○○を叱り続けた」
 何回も学校から出てしまう○○を教室に正座させ、私も正座して長時間叱り続けました。「学校から出たら×でしょ」と何度も言い聞かせました。○○は泣いたり怒ったりしながらも、「学校から出たら×」と手で×の合図をしました。しかし、彼が学校から外に出る回数は減らず、正座が繰り返されました。
 しかし、この悲しい関係もなくなる日がきました。学校から外に出られる8箇所の1つ1つの場所で、自転車を内と外に置いて「こっちは○です」「こっちは×です」と確認しあった日を境に、構内で自転車を楽しむようになったからです。
 その後、○○は「学校から出ない子どもは○」と、満面に笑みを浮かべて私にサインを送りながら自転車を楽しんでいました。

 この子どもは「学校から出たら×」は分かっても、学校にいる状況、学校から出た状況そのものが分かっていなかったのです。指導のポイントがずれていたのです。
 繰り返し指導しても効果がない場合、指導のポイントそのものをチェックする必要があります。
 「何回言っても、できない」「何回させても、できない」とすれば、「言っていること」「させていること」じたいが間違っているということです。

校長室より12 私の先生なんか、片手でピアノが弾けるんだからね2

「特別支援学校は職員数が多く、一人一人に対して手厚い指導、支援を行ってもらえる」と、たびたび耳にします。
 これは、二つの意味で誤りだと言いたいのです。

 第一に、「人海戦術」は褒め言葉ではない。児童生徒の自立に向け、指導するのですから、最終形は、チームで支援しつつ(これは外部からは見えない、分からない)、年度当初よりも少ない人員で指導する体制、学級やグループによっては一人で指導する体制になるはずです(これは外部から見え、分かる)。ですから、参観者に「指導途中の様子です。年度末にはまた違った様子を見ていただけます」と話しています。

 第二に、「特別支援学級の方が、人手が多い(ことが多い、ことが少なくない)」。こちらについても、子どもは子どもから学び取るように育てるという視点から適切かどうか、検討が必要ではないかと話すようにしています。

 ちなみに、私の初任校は、肢体不自由の特別支援学校。件の子どもは三肢麻痺(両足と片手の麻痺)、その子にとって着替えや作業などが片手でできるようになることは大きな目標でした。
 ですから、片手でピアノが弾けることは自慢できることと思っていたのでしょう。

校長室より 11 私の先生なんか、片手でピアノが弾けるんだからね 1

これは新採用の5月、担任する子どもが隣のクラスの子に放った言葉です。
 私は小学部2年生の担任。ある朝、1年生担任と教室に向かう途中、子どもたちが口喧嘩をしていました。1年生が「私の先生は絵が上手だ」と担任自慢をしたのに対し、私の学級の子どもが言い返したのがタイトルの言葉でした。
「小網先生、愛されてますね」の言葉に冷や汗一斗。ほろ苦い思い出の一つです。
 さて、本校を参観された方々から数々のお褒めの言葉をいただきます。
「指導が丁寧ですね」
「掲示が工夫されていますね」
「先生方が明るいから、子どもたちも明るいんですね」
 チームふれあい、職員の努力の賜です。
 ですが、時に引っかかることもあります。それは、「手厚い指導をされていますね」と言われることです。
 「特別支援学校は職員数が多く、一人一人に対して手厚い指導、支援を行ってもらえる」と、たびたび耳にします。
 これは、二つの意味で誤りだと言いたいのです。

校長室より 10「手取り足取りでの100点」と「自ら学び取った10点」どちらが尊いか

日本の職業の49%が、10〜20年後に機械・ロボットによって代替が可能となると予測されています。以下が代替可能と予測される職業です。(野村総合研究所)
小売店販売員 会計士 セールスマン 乗用車・バンの運転手
荷物の箱詰め・積み下ろし作業員 レジ・切符販売 一般秘書 カウンター接客係
大型トラック・ローリー車の運転手 コールセンター・施設の案内係
 子どもたちは、身に付けた知識がすぐに使えなくなる時代を生きることになります。学校は、生涯学び続ける子ども、自ら学ぶ子どもに育てることが求められています。 「主体的、対話的で深い学び」は特別支援教育でこそ実現しなければならないのです。
子どもの「独り立ち」とは、自分で決めて(自律)、必要な支援を求めながら、自分の力で(自立)やりとげる姿と言えます。 
そのためには、一人で知りたいとき、したいとき,
支援の求め方を含め、その方法を知っていることが必要です。
そして、何より学び取る姿勢が大切です。
これまで教育相談で「保育園・幼稚園や、小学校に入園・入学したら、子どもの言葉が悪くなった」という相談を多く受けてきました。
 私は、このようにお話してきました。いかがでしょうか。
「よかったですね。教えてもらっても中々身に付かないのに、お子さんは教わってもいないことを自分で学んだんですね。将来が楽しみですね。大丈夫です。1か月もすれば落ち着きます」。
「手取り足取りでの100点」よりも「自ら学び取った10点」が尊い。このことを先ず共有したいのです。
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